一つのことに情熱を注いでいるとどこかでそのジャンルの最高峰の人物と関わる邂逅とも言える機会を得ることがある。
それは釣りだけでなく、何の世界であってもよくあることだろう。
私の場合はエビ撒き釣りにハマって関西のエビ撒き釣り界のレジェンドK古氏とご一緒させていただいたり、波止タチウオ釣りにハマれば武庫川一文字の名手の方々とも顔見知りになったり。
ここ最近は船タチウオに熱をあげていて連続で通って技を磨いていたところ、船タチウオテンヤ業界のエース、ハヤブサの菊池氏と船タチウオテンヤを一緒に釣行させていただく機会を賜った。
これは後学の為にも断る理由は無いと考え即決。
ところが前日の天気予報では海はかなり時化そう。
そして事前の釣果情報では小型サイズのタチウオがメインだった為、出船予定の船は「小型は捨てて大型狙いで出船」とのこと。
前日には菊池氏より「そんな感じですけど大丈夫ですか?」と優しい心配りをいただいたが、せっかく勉強出来る貴重な機会なので少々シケようがタチウオが釣れなかろうが得るものしかない釣行には代え難い。
全く問題なく参加決定。
泉佐野食品コンビナート「上丸」
この日お世話になった遊漁船は泉佐野より出船の「上丸」
一般的な遊漁船よりも大きめの船を擁しており、船長も大阪湾船タチウオに精通したプロフェッショナルとのこと。
私なりに上丸について知人や周囲の話などわかる範囲でリサーチしたところ・・・
船長の圧がかなり強い系の船宿とのこと・・・・。
私と言えば、怒られると萎縮しちゃって楽しくなくなる性質なので海がシケるとか魚が釣れないとかよりよっぽどそっちのほうが心配だ。
テンパってミス連発して怒られないようにしないと・・・。
初めて利用する遊漁船なので集合場所がよくわからなかったが、菊池氏が近くのコンビニから乗り場まで案内してくださることに。
こんな初心者な私にも分け隔てなく優しくしてくれる。人気者で皆に親しまれるのも頷ける。
上丸。スゴイ
菊池氏と合流後、上丸の集合場所へ。
まず驚いたのが船がデカイしキレイ。
日々マメにメンテナンスされているであろう美麗な船にはそれだけで好感がもてるし釣りへの情熱も十分すぎるほど伝わってくる。
船釣りには必須とも言える氷も軽トラックで大量に用意されていて常識的な範囲で使い放題。
船宿によっては多少の制限があったりするが上丸では新鮮な氷を大量に用意してもらえる。
可能な限り新鮮な状態で釣った魚を持ち帰ってもらいたいという気持ちの裏返しだろう。
圧が強い系と聞いていたが・・・この時点で実はそうではないのでは・・・?と感じ始めた。
そして船内。大きなキャビン(船室)が2つ。そして明るい照明が備え付けられていて非常に快適。
色んなメーカーのステッカーが貼り付けられていて、業界関係者からの信頼も厚いんだろうなというのは伺い知れる。
出船してからは菊池氏や同行者のタチウオ釣りへの熱い情熱に耳を傾けているうちにあっという間に到着。
ちなみにこの日は釣り業界関係者の方々が何名か一緒に乗っていた模様。
さぁ、ドラゴンタチウオ釣ったりますかい。
私の希望もあってこの日は菊池氏に可能な限り近い場所とリクエスト。
そしたらはじめて訪れた船宿に関わらずミヨシ(最前方)を船宿の女将さんから指示してもらえた。
私の後ろに菊池氏が位置するポジション。
菊池氏曰く「一番釣らなあかん釣座ですよ(^^)」と出船前に軽く脅されたが、こちらとしても望む所である。
私としても稽古をつけてもらいに来ているわけで。
少々恥をかかされるぐらいでちょうど良いとすら思っていた。
水深100メートルワールド。
到着する頃には周囲はすでにかなり明るくなってきている頃で、いつも船タチウオテンヤをしているポイントとは少し違う様子。
かなり遠い位置にタチウオ遊漁船の船団が見える。
「なるほどね~。小型メインの数釣りは捨てて大型狙い便ってのはマジなんやな」と理解。
周りに遊漁船はほぼおらず、上丸だけが浮いている状況。
そして到着後すぐの水深は約130m。
今まではせいぜい100mまでの水深がメインだったので一気に30mも水深が深くなった(^_^;)
「じゃあ、まぁ、ぼちぼち始めますかねえ」とゆっくりテンヤを装着させていると・・・
船長の「はよ。はよ。はよ釣ろうや。はよはよはよ。」というスピーカーからの声が。
こええ。
怒られる前にはよやろ・・・と焦って投入。
底から20m~40mぐらいで反応があるらしいとのアナウンス。
「いつもより深いからよくわかんねーけど100mぐらいからシャキシャキと探っていくかぁ??」とテンポよく探っていくと・・
(多分)船中ファーストヒット。水深80m程度のところ。
次の投入ではタナさえわかってりゃー簡単だろうと思ったが連発するわけでもなくアタリもやや遠い。
「この反応であかんのかぁー?」と船長の圧がスピーカーから聞こえる。笑
やっと乗ったと思ったらコウイカ。
いらないのでリリースしようと思ったら「はよビニールいれてクーラーいれとけ美味いぞそれ」と船長からスピーカーで言われてしまったのでキープ。
ここでアタリが遠いためか少し移動して付け直しすることに。
ドラゴンタチウオ探し便なので色んなところをさまようのはある程度の覚悟の上。
この日はそれなりのシケ予報だったがある程度の経験がある人なら別に全然問題ない程度の波の高さ。そもそも上丸は大きめの船体なので揺れにも強い。
足元のスペースも広々としているのでテンヤもストックしておきやすい。
ハヤブサ、シマノ、ダイワなどなど色々なメーカーのテンヤを用意。
また、船宿からは高品質なイワシが提供される。
菊池氏によると他の船宿ではやっていない処理を施しているのだそう。
今回はちょっと多めにサンマを用意してきたこともあってサンマの反応が悪かったら使わせてもらおうかなという次第。
テンヤについても質問したいことがあったりなので基本的にはハヤブサの速掛型テンヤを使用。
間近で見るハヤブサ菊池氏
船を付け直し、後ろを振り返ると菊池氏が釣りをしている。
テレビやイベントで見る人が間近で釣りをしているのを見るのはなんとも不思議な気分。
※ちなみに写真については本人からの許可をいただいている。
顔も名前もブログにもSNSにもどうぞご自由にとのこと。本当に懐が深い。
また、実際に喋ってみて腰の低さ丁寧さには驚かされた。私は終始「社会で相当揉まれとるなぁ。ワイには真似できん。好感度の塊やん。」感心しきり。
あと、シンプルにコミュニケーション力が異常な高さだ。陰キャ根暗を絵に書いたような私とは対極のキャラクターに思えた。
そりゃーメディアで引っ張りだこになりますわ。
続ドラゴンタチウオ探し@水深100メートル以上
はるか彼方に絶好調洲本沖の大船団が見える。
依然としてこの周辺で浮いている遊漁船は無い。上丸ただ一つだけが浮いている。
この日タチウオ狙いの船はほぼ9割が彼方前方で船団を形成しているのに上丸のみポツンと離れている。その異質さたるや。
客を乗せてコレをするのはよほど自信と経験がないと出来ないことだろう。
が、しかし・・・。
水深100メートルオーバーをひたすら狙いうちするも・・・
釣れるのは指3本あるなしの80cmサイズ。波止で釣れるアベレージサイズ程度。
もうひたすら同じサイズがガンガン釣れる。
ガンガンに釣れすぎるのでテンヤのロストが4回。我ながらヘタクソだなぁと思う。
しかもそのうち3回がPEラインから。そんなことしてるから時間を無駄にしちゃって釣果が減るんだよねえ。
この前日だか前々日だかには、1日便(午前午後便)で3桁に到達する人が現れるほどの魚影の濃さ。
もし水深100メートルを超えるエリアではなく100未満のエリアであれば今回の釣行でも3桁を狙うことは容易かったかもしれない。そのぐらい超好反応。
菊池氏の探見丸を見せてもらったところ・・・・
水深142mを示していて・・・・100mあたりに赤い帯が見える。
これが全部タチウオ。
もうめっちゃくちゃ濃い反応。
テンヤをそのタナで置いておけばいくらでもアタリが出せてしまう。
最後まで諦めずに深場を狙う。出るかドラゴン
何度も何度も移動を繰り返し、深場深場を丁寧につけ直す船長。
しかし釣れるサイズは・・・。
指2本半とか・・・。
菊池氏も反応のあるタナだけでなくベタ底~中層までドラゴンが出現する可能性をひたすら探るも、ただただ小型サイズの数が増えるだけ。
事前にはあまり釣れないかもしれないと聞いていたので25リットルクラスのクーラーで臨んだがもう入る隙間がなくなってきてしまった。
時刻は15時を少し回ったところで最後の一匹を釣ってちょっと早めに納竿。
早めに終わって菊池氏の釣りを見学したかったので。笑
納竿してからは菊池氏が3~4匹程度釣り上げるところを見学させてもらって大変参考になった。
上丸 ドラゴンタチウオ探し便最終釣果
最終釣果は私49匹で次頭。
菊池氏は57匹で余裕の竿頭。さすがと言うほかない。
思い返してみても私がもっとカツカツにやってさらにミスも少なかったとしても55匹前後程度だっただろうなというイメージなので実力差は歴然としている。なぜなら菊池氏だってカツカツでやっていない。
アタリを出す速さなんかは見ていても大差はなさそうだけど、掛けるまでの速さ、バラシの少なさ、ミス(トラブル)の少なさで差が出ている様子。
あと、日によっては技術経験の引き出しの有無でもっと差がつきそうなのは容易に想像がつく。
船タチウオテンヤを初めて2~3ヶ月程度のド素人が菊池氏との差について言及するなど噴飯モノではあるけども。
上丸について
帰港後は船長や女将さん、菊池氏や他の同船者さんと和やかに挨拶をして解散。
気がつくと上丸において当初色んな人から聞いていたイメージとは全然違う印象を抱いていた。
この日は熟練者ばかりだったということもあるし乗船者が少ないこともあってトラブルも比較的見られなかったのもあるが、船長は頭ごなしに何かを言うこともないし(見た目はちょっと怖かったけども)怖い人というイメージも私には無い。むしろめちゃくちゃ良い人だった。
釣りに対して熱量が極めて高く、そして本当に心の底から客にタチウオを釣ってもらいたいという想いから物事をハッキリ言うだけなのだろう。
業界関係者からの信頼が厚い理由の一端に触れたような気がした。
釣行後はエビ撒きハネ釣り先輩のO氏が営む和食店へ。
やっぱり本物の料理って良いな・・・。
もうなんつうか、プロなんだよなぁ。上丸にしろ、O氏の和食店にしろ。
見習いたいですなあ。